2014年11月13日木曜日

どのようにしてデータ処理の生産性を上げるか?

どのようにしてデータ処理の生産性を上げるか?

<顧客の課題>
インクジェットによる大型枚葉紙への印字サービスを進めるに当たってハードウエアの開発と同時に必要な技術はデータ処理技術の開発です

・バーコード(1次元バーコード~QRなど2次元バーコード)
・コンサート会場などの座席番号(1階12列22番 etc
・宛名印字などDMへの応用
・携帯キャンペーンなどに用いられる「乱数」印字
・地図などビットマップ情報による差替え印字
・全国に展開するチェーン店などで1店舗毎の使用数が異なる刷込み
・記号や発行数量が多種に渡るナンバリング

以上の様な「課題」に応える為には各々個別のデータ処理が必要となります、インクジェットを社内に導入する以前は、プリンターを使うべき案件を受注した場合は弊社でも社外に委託していました。当時はCOBOLなどの言語でのプログラミングが必要となり

・データ処理/システム設計 : 30万円
・印字代 : @2から@3 インチあたり

というような請求がきていました。1面の中にバーコードを一か所印字するという程度の内容でもとにかく一律30万円、この金額が相応なのか?不相応なのか?議論の余地もありませんでした、何故ならその処理は完全なブラックボックスだったので

黒船登場と戦々恐々の念で迎えられたE-Printが登場すると更に「パーソナリゼーション料金」なるものが請求項目に現れてきました

例えばフルバリアブルDMを80,000枚製作しようとした場合の2001年当時の見積りは

前工程
・フォーマット及びスクリプト作成料金 : 100,000
・パーソナリゼーション料金 : 80,000×@504,000,000
E-print印刷
・基本料金 6面付け : 6,000
・印刷料金 4/4c : 13,334t×@1602,133,440
事前に前頁分のデータを作成しておく必要があるそうで、その為に1週間掛かるその料金が400万円という説明でしたが、人手ではなくパソコンが演算をしているだけの価格としては直感的に高すぎると思えてなりませんでした。だだ、フルカラーでパーソナライズしたDMが通常DMに較べて格段のレスポンスアップを獲得しDM発行費用を大きく上回ればこの価格はペイする事になります。但し、これだけの価格になると利幅が比較的大きな商品の販促でないと厳しいであろうことは容易に想像できます

時代は進んで2006年頃にはXeroxからiGen3という高品質、高生産性のプリンターが登場してきました、たまたまその時期、顧客からモノクロではなくカラーでナンバリングしたいという要望があり見積りを取ったところ

カラーナンバリング刷込み (菊4切6面 12500t)
・カラーバリアブル処理 75000件×@302,250,000
・印字 12500t×@1001,250,000

とやはり事前に作成する処理費が重く、ナンバリングに色を付けたいという軽い希望を満たす為には不相応なコストアップだったため却下されてしまいました

ドキュテックなどオンデマンド機を導入して「パーソナリゼーション」専門で回しているという話しをあまり聞かないのは、如何に合理的にデータ処理を行い事前に掛かる費用を低減させるかというスキルが確立されていないからではないか?と多くの見積りを消化しながら感じていました

そして、データ処理の生産性を改善しこの部分の金額的負担を低減させれば「パーソナリゼーション」の仕事にチャレンジしやすくなり市場は広がるという事に気付きました

<ゑびす堂の対応>
弊社がメインで運用しているKODAK社のシステムでは事前に出力する全ページ分のデータを作成しておく必要がなかったので「パーソナリゼーション料金」を設定する必要がありませんでした。このオン・ザ・フライの仕組みはコストの圧縮、スケジュールの圧縮の両面で大きなメリットとなっています

従って、弊社のデータ処理は事前に行う必要があるテキスト処理が主となっています。

インクジェットによるバリアブル印刷の事例を数多く消化していると、共通して行われるデータ処理が存在することに気付きました。この処理を細かくルーチン化して蓄え、新たなデータ処理に際しては、蓄えられたルーチンを組み合わせて再活用する。新たにルーチンを書き起こすリスクと負担を低減できるようにしています

また、テキスト処理が主となるので、JGAWKPythonRubyなど入手コストの掛からないオープンソースを極力活用しバッチ処理で生産性の向上を図り、柔軟で高い生産性を兼ね備えた処理体系の構築を目指しています

<データ処理例1>乱数データの面付け印字の場合

「乱数」はキャンペーンやゲームなどのログイン情報なでに使われます。多くの場合エンドユーザーが発行し弊社に支給されますが弊社でも乱数生成は可能です、この場合の必要要件は

1.    桁数
2.    各桁に使用する文字種 (数字のみ、数字と欧文大文字、数字と欧文小文字 etc
3.    発行数

桁数は必要数に対して十分に余裕をみる必要があります。仮に5000件の乱数が必要な時に桁数を5桁にすると使用率は5000/99999 で5%となり00001から99999の区間の1 / 20もの数列を使うことになり質の良い乱数になりません

また、各桁数に使用する文字種に関しても注意が必要です。数字だけであれば問題ないが、数字と欧文を組合わせて用いる場合には「0 数字」「O オー」「1 数字」「l エル」「I アイ」などは読み間違える可能性があるので最初から弾くなどの配慮が必要です

エンドユーザーから支給された「乱数」であってもこうした問題を含んでいたり、「重複」などがある場合もあるので十分な確認と説明が必要になります

こうして得た乱数の一例です

1234567890123456
3136974197498601
1816139457837506
3286936395032679
6934710823292124
0279848920290170

 乱数はこのままでは確認がしにくいので、弊社では管理番号と抱き合わせて扱っています

1 1234567890123456
2 3136974197498601
3 1816139457837506
4 3286936395032679
5 6934710823292124
6 0279848920290170

また16桁の数値は読み難いので4桁毎にスペースやハイフォンを入れる場合もあります

1 1234 5678 9012 3456
2 3136 9741 9749 8601
3 1816 1394 5783 7506
4 3286 9363 9503 2679
5 6934 7108 2329 2124
6 0279 8489 2029 0170

こうして得たデータを面付け処理します

例として2面付で3通しの場合は

1 1234 5678 9012 3456 4 3286 9363 9503 2679
2 3136 9741 9749 8601 5 6934 7108 2329 2124
3 1816 1394 5783 7506 6 0279 8489 2029 0170

これが印字用の最終データとなります。

データが数千万件と多い場合、面数が40面等々と多い場合でも同じように速やかに処理が行なえます。

「乱数」を例にしましたが、これが一次元バーコードデータであってもQRバーコードデータであっても、DMの宛名印字のような2バイトデータであっても処理は同一です。全てテキスト処理の対象になります。

地図など、ビットマップデータの差替えの場合は、同一解像度、同一サイズのモノクロ2階調のビットマップファイルをフォントにアサインし、特定のコードで呼び出すという方法を取ります。例えば




となっていれば印字用フィールドの値が「1」なら0001.bmpの内容が印字されます

<データ処理例2>全国展開の居酒屋などで店舗ごとに必要枚数が異なる場合
必要なデータは


自至は印字内容が店舗毎に同一であれば不要です
部数が一定でないジョブを多面付で効率よく進行する為には


というような工夫が必要になります。仮に10面で進行する場合は

1台目は ACが各1面、F8面で100
2台目は B2面、D3面、E5面で100

これで100枚毎に製本することで100枚の束を20個得る事ができます

このようなジョブの場合、最初のエクセルの表さえ御支給頂ければ最も効率的なデータの組合せでデータ作成を行い、このような製本作業に習熟したパートナーと共に多種多ロットの品物の製造を効率化することが可能になりました

今までこのような仕様の取扱いに困られていたお客様から高く評価されています

<満足ポイント>
多くの場合、データ処理料金が基本料金で収まります。ご用意頂くデータも必要最低限で済みます。「バリアブル」の仕事の障壁であった「パーソナリゼーション料金」が必要ない仕組みなので幅広い分野で「バリアブル」を応用した試みが可能になりました。


データ処理の速度、安全性共にご評価頂いております

インクジェット導入の経緯 / クレジットカードテイクワン型入会申込書

事例1 クレジットカードテイクワン型入会申込書

<顧客の課題>
 アメリカからの外圧による市場開放の要求に伴い、1992年、DCカードやJCBなど銀行系のクレジットカードでショッピングリボルビング払いが解禁された。それまで銀行系は1回払、2回払い、ボーナス一括払いのみであったがこの制度改革によって各カード会社は顧客獲得競争に突入した。
 弊社においては、従来テイクワン型の入会申込書へのナンバリングをそれまでも請け負っていたが、必要生産量は日産15,000部程度で、主に特殊な活版印刷機で対応していた。
 然しながら、市場開放によって生じた顧客獲得競争において必要な日産量は10倍の150,000部となり根本的な生産方法の見直しを迫られた
 入会申込書に予めナンバリングをする目的は全国各所に配布した入会申込書によってエンドユーザーがエントリーした場合において、何処に配布した申込書によってエントリーがなされたかを把握する為である。このデータを管理することによって入会申込書の適切な配布が可能になる





<ゑびす堂の対応>
 当時、巻き6つ折りした後の用紙に対する活版ナンバリングにはデルマックスのようなプラテン型の活版印刷機を用いるのが主流であった


 弊社も数台の同型の印刷機を所有していたが、顧客の希望の日産量を満たす為には増設及び増員する必要があった。この選択はこの仕事を消化する為には正しい解決方法であったが年間の稼働をも考えると投資に見合わない事は明らかであった。
そこでそれまでは国内ではこうした用途に使用された前例は皆無であったがインクジェットによる印字方法を提案し同時に国内では初めてのインクジェットによる印字搬送系の構築に取り掛かった
インクジェットによる印字ラインは
・フィーダー
・印字ユニット
・ドライヤー
・部数カウントユニット
によって構成される。コンプリートな搬送系は国内には当時は存在しなかったのでメーカーと共に独自設計し構築した

完成したラインはこのように15,000/時の製造が可能になり同等のコストで要望された日産量を達成することが可能になった

<満足ポイント>
 ・顧客が希望する日産量の製造が可能になった
 ・インクジェットを使う印字なので乱数などPCデータを使っての印字が可能になった
 ・数字、欧文、日本語、バーコード、画像を取り扱う事が可能になった


通常のナンバリングに留まらず、バーコードや地図などの画像差替え、乱数の印字やDMの宛名印字など取り扱える範囲が拡大し新たな需要開拓の武器となった

インクジェットによる印字の大型枚葉紙への展開

インクジェットによる印字の大型枚葉紙への展開

<顧客の課題>
加工済みの製品への印字でスタートした弊社のインクジェット事業であったが、元々の弊社の事業領域である大型枚葉紙への展開の対するソリューションとしての活用を求められるケースが次第に増えて行った

・バーコード(1次元バーコード~QRなど2次元バーコード)
・コンサート会場などの座席番号(1階12列22番 etc
・宛名印字などDMへの応用
・携帯キャンペーンなどに用いられる「乱数」印字
・地図などビットマップ情報による差替え印字
・全国に展開するチェーン店などで1店舗毎の使用数が異なる刷込み
・記号や発行数量が多種に渡るナンバリング

従来もこうした「課題」に対するソリューションとしてプリンターが用いられていたがビジネスフォーム+漢字プリンターという流れが主流となっていた

この流れで業務を処理する為には元刷りをビジネスフォームで製造することが必須となり、そうなると

・用紙の種類・厚さ・用紙寸法が制限される
・カラー印刷の品質、色数、後加工の種類などが制限される(当時)
・社内のリソースが活用できない(枚葉のオフセット印刷機が使えなくなる)

などの「制約」が発生し、「何とか従来どおりに枚葉のオフセット印刷機で元刷りをして上記の特殊な印字内容に対応できないか?」という要望が慢性的に存在していました

<ゑびす堂の対応>

枚葉紙+プリント(レーザー、インクジェット)は現代では最も先進的なシステムとして開発競争の最重要課題になっていますが、当時は昭和情報機器のA4への追刷が出来る機種があった程度でドキュテック等はまだ存在していませんでした。当時、A4に4面付け、バーコード印字7000ページという内容の依頼を受け、メーカーに相談したところ数時間で対処できるという事だったので、台紙をオフセット印刷で製造し、A4に仕上げてメーカーショールームに持ち込みました。ところが数時間どころか一晩掛かっても刷了せず大変困りました。

用紙がコート紙であったことも災いした様子でしたが、予想以上にジャムったり不正給紙したり、レーザープリンターが好まない紙粉などによりしばしメンテナンスが必要になったりで、このような用紙に関してはカタログスペックでは運転できないという事が確認できました、当時の搬送系はコピー用紙のような用紙用途であって、オフセット印刷した後の癖の着いた用紙への対応を考慮して設計されていなかったからだと思います。こうした事例を積み重ねた結果、

「しっかりした搬送系を備えた大型枚葉紙に対応するプリンター」に可能性があることを実感しました

プリントする原理として代表的なのはレーザー方式とインクジェット方式ですが、既存の搬送系に組み込むことを考えると非接触式のインクジェットの方が有利で、何よりも弊社では既に折加工済みの製品への印字手段として1インチヘッドを2つ所有していましたので、新たに搬送系を設計し、ここに1インチヘッドを2つ組み込んだ形のインクジェット印刷機を完成させる事を試みました。こうした応用は国内では初めてであったはずです

実はこうした試行錯誤をしている頃、アメリカのチェックテクノロジー社の菊2切サイズでも後刷り可能なレーザープリンターが日本に上陸したことがあります。非常に魅力的な完成した機材ではありましたが、トナー等のランニングコストが気になりました、従来活版印刷機のよるナンバリングに関してはインク代ほぼゼロに近かったので、この点において従来の受注価格のままではそもそも成り立たず、「これで活版印刷機を捨てられます」というメーカーの説明のようにはならないだろうと思われました、インクジェットはこうしたランニングコスト面でも有利でした。

その後もデジタル印刷のランニングコストの高さはオフセット印刷の単純な置き換えにならない1つのネックになっています。デジタル印刷が既存の技術と競合しない分野として「バリアブル」への対応を掲げるのはこうした背景があると思われます。今後、もしインクの使用を抑えたランダ社のナノテクノロジーやMemjetなどがこうした面をカバーしていくなら、こうした制約も何れは外れバリアブルに限らずプリンターがカバーする領域は増えていくかもしれませんが現時点ではまだそこまでには至っていません

弊社のプリンターは、スタート当初のスペック
・最大用紙サイズ:菊2切
・印字ヘッド:1インチ×2列
何度かのアップグレードを経て現在は
・最大用紙サイズ:A全
・印字ヘッド:4インチ×2列
になっています

https://www.youtube.com/watch?v=BxQsKrZKVmQ

<満足ポイント>
オフセット印刷機+枚葉インクジェットによる追い刷りは様々なメリットがあります

・ビジネスフォームに頼らず「バリアブル」印字ができる
・用紙サイズ、用紙厚さの対応範囲が広い
・ドキュテックなレーザー系に比べてランニングコストが安い
・生産性が高い
・「課題」に挙げた従来のナンバリングでは実現しえなかった幅広い「バリアブル」に対応できる


例えば、名刺サイズで乱数入りスクラッチカードを製造する場合

・印字 菊2切 40
・スクラッチ加工 菊2切 40

とうような進行が可能になります。菊2切に関しては2ラインあるので、日産50,000シート程度の印字が可能(小数200万枚)となり、コストの掛かるスクラッチ加工を菊2切で行える事もプラスし、生産性・コスト共にドキュテックなどA4切系の機材に較べ断然有利です。仕上がりA4ならA8面での印字も可能です。